夫婦二人で土鍋料理

文豪が愛したシンプル鍋で、二人で乾杯

 

 

『鬼平犯科帳』や『必殺仕掛け人』で有名な作家、故・池波正太郎は大のグルメで作品中にもたびたび料理の描写がみられます。自身も包丁を握り、酒豪であった彼が好んだのは、ちゃきちゃき江戸前の素材を生かした超シンプルな料理でした。もちろんお酒に合うものばかりです。

 

なかでも大根鍋は、究極のシンプル度。鍋に昆布を敷き水と日本酒を入れて細切りにした大根を煮、いただくときに薄く醤油をたらすだけなのですが、これがもう最高にうまいのだとか。いくらでも食べられ、お酒もすすむそうです。夫婦二人でしっとり、お酒を飲みたい夜にはうってつけのお鍋です。

 

江戸っ子が愛したねぎま鍋もいまは水菜やキノコ、焼き豆腐などさまざまな具を入れて楽しまれていますが、池波流レシピはネギとマグロのみ。よけいな具材はいっさいありません。昆布とかつおのだしに醤油とみりん、酒を加え、鍋汁を少し濃いめの甘辛味に仕上げるのがコツです。薬味には山椒が合います。マグロは赤身ですが、中トロを少し加えてもいいでしょう。

 

ぶつ切りにした白ネギは生のままでもおいしくいただけますが、網やトースターで焼き色をつけてから鍋に入れると、またちがった香ばしい風味が広がります。日本酒のほか白ワインにも合う、文豪おすすめの土鍋料理です。